2007年06月30日

おばけ




幼いころ、夜が怖かった。


暗闇の中に目が覚めた時。覚めてしまった時。
天井の板を見つめる。

古い壁時計の音がカチカチと響いている。
こんなに音が大きかっただろうか。

その時計はゼンマイ式だ。
蝶々の羽のような形をした大きな鍵が、僕は好きだ。
台所から木の椅子をえっちらおっちら運び
時計の前に置いたら、椅子によじ登り
手を伸ばして時計前面のふたを開ける。落ちてくるほこりに顔を背ける。
振り子を止める。
時計の底にある大きな鍵を手探りでつかむ。
文字盤の四時の左に空いた穴。そこに鍵を差し込む。
大きな蝶々の羽の部分を小さな手で回す。

「ギリ、ギリ・・」

半周もしないうちに、ゼンマイの「もう回せませんよ」という
手応えが返ってくる。そりゃそうだ。昨日、めいっぱい回しておいたばかりなんだもの。
ゼンマイが巻けるようになったのは僕の自慢だった。



そんな、僕への感謝も忘れたのか
暗闇に、壁時計の音は大きすぎる。
カチ カチ カチ カチ
部屋中を、世界中を満たしていく。
そして、次第に意識を溶かしていく。
「おばけの時間」、だ。



天井の板の木目が、おかしい。
親指の指紋のような形。その木目が動いている。きっと、あれはおばけだ。

オレンジの豆電球が点いているのに、ひときわ暗い部屋の片隅。
タンスの影。そこに何かいる。
何かいるのは分かっているから、僕はそこが無性に気になりながらも
眼を向けることが出来ない。

カーテンには、何だか知らない葉の影を、街頭が映し出している。
人の手のひらのようなその影が、「おいでおいで」と揺れている。
本当は葉っぱなんかじゃないんだ・・。

僕は布団を頭からかぶり、隣に寝ている母の腕にしがみつく。


(つづく)


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posted by 白井麒麟 at 12:53| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月25日

西日のいたずら


四角い西日



四角い西日.jpg












西日は時にいたずらをする。
世界を綺麗に見せたり
象徴的に見せたり
幻想的に見せたりする。







シルエット1.jpg
















西日のいたずらは
時を止めてしまったりする。








シルエット2.jpg












幼いころの夕暮れを
不意に
心に作り出す。





ラベル:西日 写真
posted by 白井麒麟 at 23:17| 東京 🌁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

雨の休日に向かう先




週間天気予報は見事に外れ

傘.jpg







傘に慣れない子どもは、見事にこけた。

1.jpg









初夏。雨の休日に出かける先は・・。









電車を乗り継ぎ30分。
ホームに降りる。





いきなりクライマックスの映画のように
その花はそこにあった。





電車に紫陽花.jpg







「うれしいけど・・ちょっともったいない」









それでも、だった。









旬を迎えた「あじさい寺」。





紫陽花の園.jpg








この花は
梅雨という
ぐずぐずした季節にこそ
咲いてくれる。











.jpg






ラベル:紫陽花 あじさい
posted by 白井麒麟 at 19:47| 東京 ☔| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月23日

僕は麒麟





僕は麒麟。
白い麒麟。


生まれてこのかた
できるだけ遠くに行くことが
僕の目的だった。
遠くにある何かを
(何かは分からないけど)
探してた。

だけど・・。



この場所を使って僕が言いたいことはたった一つ。
それを、この場所の標題にした。


ヨーロッパの平原に
家畜を飼う男が見える。

彼の、簡単なつくりの家
その周りは
もう草がなくなった。
みんな家畜が食べてしまった。
裸ん坊の大地をながめながら彼は考えた。

家畜に草を食べさせなければ
ミルクにも肉にもありつけない。

彼は家をたたんで歩き始める。


苦難の末、見つけた草原。

彼が腰を降ろし一息ついたとき
背後からから声がする。

「ここは俺の場所だ」

振り返ると皺の深い男の見下ろしている。
男は立ち上がり、少し考える。
そして・・振り向きざまに相手を殴る。

殴り合いが始まると
それぞれの側に
商人がすり寄っていき
二人の手にソードを握らせる。


美しい草模様の入ったそのソードが
皮肉にも
草を求めていた
男の胸に刺さる。



この物語の主人公になるのか、相手の男になるのか、それとも商人になるのか。
どの可能性だってある。


そして、この物語にもう一人の登場人物がいるとしたら・・。


それは、二人の闘いを遠目に見ていた農夫だろう。
彼は家を移る必要がない。
何故なら自分のための食物は、彼の畑や田から採れるのだから。


僕はここまで書き進めて思う。
4人の登場人物は、それでも等価だと。


4人のうちの誰の視点からも、その人の物語はあるし、ちゃんと自分を主張すれば
それはおそらく共感を得ることができる。
それが「あしもと」の意味だ。


**


ある男が、立っている。
雑踏行き交うスクランブル交差点に向かって。

装置はある。
男は装置から伸びたマイクを握り、つぶやく。

「答えなんてない。出したい奴だけ出せばいい。
僕たちは答えのない世界を生きてるのだから」

静かな声で男は続ける。
特殊な装置のおかげで、彼の声は、聞きたくない人には届かない。
聞きたい人にだけに伝えることができる。

「それならば、答えがないのなら‥、自分の感じることを答えにしていこう。
他人の風景に憧れて、世界を嘆くより、自分の街、自分の場所、自分の家族、友達。
そこで生きることを楽しもう」


その男に、僕はなりたい。


僕は麒麟。
白い麒麟。




[麒麟]
2 中国の想像上の動物。
聖人が出現する前兆として現れるといわれた。
体形は鹿、蹄(ひづめ)は馬、尾は牛に似て、頭に1本の角があり、全身から5色の光を放つという。
一説に、麒は雄、麟は雌という。
(JapanKnowledge大辞泉より)
posted by 白井麒麟 at 22:15| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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