2007年11月30日

保育ノート






「すぐに慣れるよ!」
「ナーくんならきっと大丈夫!!」


息子の保育ノートにそう書いてある。

息子の大好きなユキノ先生の字。
その字をぼんやり見ながら、僕は
『本当にお別れなんだなぁ・・』
そう思った。



子どもの転園が決まった。


今通っている保育園は無認可で、三歳児までしか通えない。
「十二月からどうぞ」と、新しい保育園から連絡があったのは、
先週金曜日のこと。
とても急な話。
来年春からでいいのに・・



**



去年の九月。
妻と息子と初めて訪れた保育園。

昭和三十年代建築の古民家をそのまま使用。

チリチリパーマに巨乳、怖いもの知らずの園長。

雨の朝、僕の頭を濡らした屋根の雨漏り。

母も知らないような家庭料理を作る、若い栄養士。

赤字経営。

年二回の公園でのバザー。
しつこく食い下がる丸めがねのおばさんとの値段のかけ引き。


先生の(ちょっとキモい)
コスプレ大会みたいになってしまう、クリスマス会。


男親で集まって仕上げた屋根の修繕。


「まあいいや。このまま行こう」

走行中の自転車のパンクに気付いた園長の言葉。
それを聞いて、「まるでこの人の生き方そのものだなぁ」
と思ったこと。


通園の道。

毎朝の、息子との会話。

ガラガラという引き戸。


「いってらっしゃい」。


なんか。やっぱり、好きだった。



**



息子のことを心配してたつもりが・・。
ばか親一丁出来上がり的な状態に照れながら
ユキノ先生の保育ノート。
続きに目を落とす。





   今日は実習の女学生がたくさん来ていました。

   ナーくんが私に

   『あのおねえさん、ミスド好きかなぁ・・』

   と聞いてきました。

   ナンパする気かぁ?!






・・。





やっぱり息子は心配ないようだ。


気分は台無しだが、何よりだ。






タイヤで.jpg







posted by 白井麒麟 at 00:08| 東京 ☁| Comment(5) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月26日

ついつい



初挑戦、写真漫画!



nya1 icon




『 ニャ衛門の赤い鉄塔 第一話 』



一頁


二頁


三頁


四頁




・・嗚呼、三連休終了。




posted by 白井麒麟 at 01:44| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月24日

イルミネーションの季節です。






crystal
crystal




planetarium
planetarium





futari
futari




恵比寿ガーデンプレイスにて。
「日々の寫眞」にもう少し置いてます!




posted by 白井麒麟 at 16:13| 東京 ☀| Comment(5) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月18日

たまご








夏が終わると同時に、僕は、少し大きな仕事に飲み込まれた。
まさに調整事項の嵐。


「こんな予算じゃできません」
「そこを何とか・・」


「これとこれをマストで盛り込んでください」
「何とかこちらだけで・・」


・・もちろん、いつも情けない顔をしている方が、僕だ。
そして、日に日に関わる人の裾野は広がる。
その仕事は、まるで得体の知れない怪獣のように
少しずつ成長していった。




**



朝の保育園までの道。
仕事のことで頭がパンパンの僕。
それを察してか、息子も黙ってついてくる。
保育園に預けて駅に帰るとき、『あっ』と思うことも
そういえば、今日は家を出てから一言も話をしなかった・・とか。
でもそんな考えもすぐに仕事に飲み込まれて。


保育園までの道。
ある日、僕は手持ちぶさたから遠くのビルの窓を指さした。



「ナーくん、たまごがあるよ」



それは、ビルの二階にある麻雀店の窓に貼られた
大きなシールだった。
描かれたたまごはひび割れていて、
今にも中から何か飛び出してきそうだ。



「ほんとだねぇ」



息子の顔が少しほころぶ。僕は続ける。



「あれ何が入ってるのかなぁ」
「あれはね、あれはね」



息子は吸っていた二本指をちゅぽんっと口から抜いて、
その指をたまごに向けて話し出す。



「あれはね、あれはね、ナーくんと、ヒカちゃんと、
ママと・・パパが入ってるんだよ」



よかった、パパも入れてもらえた。。

それからしばらく、毎朝同じ遊びをした。
入っている人の名前は、そのたびに違ったのだが・・



「あれはね、ナーくんと、ユキノと、コノミと、
ハヤピーが入ってるんだよ」



保育園の先生!
しかも比較的若い先生だけ・・



「あれはね、ナーくんと、ソウヘイと、サエポンと、
ハーちゃんが入ってるんだよ」



今度は、保育園のお友達。
何となくお友達と楽しくやっている風景が目に浮かび、ちょっと安心。


そして、それはある日、
ちょっとドキリとするような答えに落ち着いた。

いつものように、聞く僕。



「ナーくん、あのたまごは何が入ってるの?」



息子がちゅぽんと指を抜く。



「あれはね、あれはね・・
ナーくんと・・ハーちゃんが入ってるんだよ」



ハーちゃんは、保育園のお友達でも一番おとなしい女の子だ。
僕が朝「おはよう」と言うと、もじもじと手を振る、
そのイメージが思い出された。



「ナーくんとハーちゃんはね、たまごから出たらね、
上に乗ってね、お歌うたうんだよ」



そうだったのだ・・

ナーくんは、ハーちゃんが好きだったのだ。


初恋、と呼ぶにはあまりにも幼い思い。
幸せそうに話す息子に、僕はにやけそうな顔を必死で抑えながら
そうか、そうか、と何度もうなづいたのだった。

息子のたまごから生まれたのは、
何となくのハッピーだった。



**



そして先週。
息子のたまごに少し遅れて、僕のたまごもようやく孵(かえ)った。
夏以来の少し大きな仕事。
それが終わったのだ。
最後は、久しぶりの徹夜だった。


生まれてきたのは、果たして天使か怪獣か−−。
その答えはまだ分からないのだけど。





posted by 白井麒麟 at 17:30| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月14日

徒然なる二回目の冬






「表現したい」という衝動を自分の中に見つけられない−。

筆者のそんな悩みが、実は、
自分の心のコアな部分=家族の問題にフタをしていたことから来ていた−。そんな内容のエッセイをまだ読み終わらない間に、電車は自宅近くの駅に着いた。


『そもそも作品というのは、「表現したい」という衝動から来なければならないのだろうか』


改札を出ながら、僕はその問題について考えていた。
その筆者の小説は読んだことがある。
確かに、その小説は激しく、面白く、さらけ出していた。
でも、今ふと思い出すと、それはまるで
サーカスの曲芸のようでもあった。


『激しい表現の衝動から来るものだけが本物の作品ならば、表現の世界はハイテンション、トランス状態を競うオリンピックになってしまうなぁ・・』


わけも分からずそんな考えの深みにはまりながら、我がマンションの駐車場を横切り、玄関の近づいた時、その光景は目に入ってきた。

マンションの一階にある、喫茶店。
その中に飾られた、白いクリスマスツリーだった。



**


去年の今ごろ。
それは関東への引っ越しから半年以上がたちながら、
何だか気分が落ち着かず、僕はよく夜中に散歩した。
まだ二歳の息子を連れて見つけたのがこのツリーだった。

閉店して真っ暗な店内に、一つだけ輝きを放つ
白いクリスマスツリー。
てっぺんには赤い星のかざりがあって、
その色がツリーの白を、より引き立たせていた。

「何だこれ? でも綺麗だねぇ」
「うん・・」

息子も気に入った様子で、長い間、店内で輝くツリーを
ぼんやり眺めていた。


**


携帯電話のデータフォルダ。
その時の写真を見ると日付は
”06 11 20”


二回目の冬。
去年より息子は少し大きくなり、会社のメンバーもかなり入れ替わった。


・・・。


そして・・・。



『今度の三連休は、メトロガイド(地下鉄に置かれたフリーペーパー)に載っていた各地のクリスマスイルミネーションを、子どもを連れて巡ろう』

僕の今日の結論。

僕の考えのまとめは、いつも起点とずれている(笑)




061120_1854~01.JPG
(去年の写真)






posted by 白井麒麟 at 07:48| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月11日

レモン







いらっしゃいませぇ















いらっしゃいませ











はんばーぐですねしょうしょうおまちお















できましたぁ!


出来ました
             レモン





?!









・・・










・・・で、ナーくんはどれを作ったの?










レモンだよ


れもんだよぉ














レモン2









posted by 白井麒麟 at 12:35| 東京 ☁| Comment(4) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月06日

ミーちゃん






ネコという動物とほとんど接点がない。



小さい時に飼っていたのはインコだったし、
子どもの涙目の訴えで飼ったのはハムスターだった。

「影丸と14匹の仔猫たち」という曲をギターコピーしながら
そんなことを思っていたら、
ひとつだけ、短いネコとの生活を思い出した。







影丸と14匹の仔猫たち
作曲/岡崎倫典
演奏/白井麒麟







それは、大学時代の僕の下宿。

京都市上京区のその安アパートで、僕は卒業論文を書いていた。
こたつに足をつっこみながら、夏の帰省の時に親父に借りてきた
ごっついワープロを叩いていた。


分かりもしないアーサーミラーの戯曲・・
タバコでも吸おうと窓を開けた時に、
部屋に入ってきたのが「ミーちゃん」だった。
「ただいまぁ」とでも言うように登場した珍客は
そのままワープロをよじ登り
ブラウン管モニタとプリンターのついた本体の上に横たわった。

見ると結構オバサンだ。
白い身体にところどころ斑点が付いている。
機械の熱が気持ちいいのか、まったりと収まっている。

「まあ、いいか」

僕はこたつに戻り、卒論の続きを打ち始めた。
時々、ワープロの上の毛をなでた。


**


ミーちゃんは、いつもふらりと現れて、ふらりといなくなった。

僕は当時大学五年目で、友達はもうみんな就職してしまっていた。
底冷えのする六畳一間で、一人でコンビニ弁当を食べ、
時々テレビを観て、時々就職した後のことを夢想した。
ミーちゃんが来るようになって三日目。
素足にスニーカーをつっかけた僕は、シャカシャカ袋に
初めてのキャットフードを下げて薄暗い玄関に帰った。


**


ある日、ミーちゃんは珍しく夜に現れた。

『おっ、来たな・・』

何だかいつもと様子が違う。


「!!」

よく見ると顔のあちこちが切れて血が出ている。
白く長かった髭もほとんど無くなるか切れ落ちてしまっている。

「誰がこんなことを・・」

僕は、もう慌ててしまって寒風の入る窓をぴしゃりと閉めると
ミーちゃんをこたつの中に放り込む。
そして、急いで電話をかける。


プルルルルル・・



当時の彼女は、大学の同級生、といっても
もう就職してしまって大阪の職場の寮にいる。
いつも夜半まで仕事をしている。


『なんてひどいことをするんだ・・
 絶対許せない』


受話器を握りながら
泣きたいような気持ちと
彼女が電話に出なかったらどうしようという不安で・・



プルルルルル・・



当時は、携帯電話などというものはない。
(そう言えば自動車電話というものはあったなぁ)



ガチャ


「もしもし?」


珍しく早く帰っていたという彼女は、
僕の慌てた声にびっくりしながらも
それは、人の仕業じゃなくて、多分ネコ同士の喧嘩であること
ネコの喧嘩はよくあることで、傷もすぐに治ることなどを
説明してくれた。


犯人を捕まえてとっちめることまでシミュレートしていた僕は、
力が抜けて床にへたばった。



**



「あの時のパパの声、聞かせてあげたいわ。
『ミーちゃんがっ、ミーちゃんがっ・・』って涙声で。
そりゃもうおかしかったんだから」


妻は今でも、時々夕飯のテーブルでそう話し、
勝ち誇ったような笑顔を僕と娘に向ける。



そう。当時の彼女は現在の妻である。


『長い付き合いの人がそばにいると、追憶に便利である。
ただし、相手からもたらされる記憶は、
都合のいいものとは限らない』

by白井 麒麟







ネコ目線







posted by 白井麒麟 at 21:59| 東京 🌁| Comment(12) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月04日

お化け屋敷





忙しいのが、やっぱり不満だ。

タンサイボーはたくさんのことを同時にやるべきではない。
それを無理にやらなければならないのがいけない。
だから、久しぶりに休日の一日があったりすると、
台風の中から南国の楽園に放り出されたような所在なさがあるわけで。
短く言うとそんな気分で僕は土曜日を過ごし、
完全にリズムを失ったまま、翌朝の今、
一人東京発の新幹線に乗っている。


派手な一団の会話の応酬、京都市の地図を楽しげにのぞき込む女性たち、PSPに興じる普段着のサラリーマン、記念撮影する親子・・。

だめだ、と思う。水たまりよりも心の狭い人、それが今日の僕だ。

品川を過ぎる。
イヤフォンで耳をふさいでノートPCを立ち上げる。
PCの背が、めいっぱい背もたれを倒した前の乗客の椅子に当たり
ほとんど垂直になってしまう。ちくしょ。
落ち着け。
かばんから新聞を取り出す。
時事ネタに興味を持てず書評など。
さらにiTuneでカチャカチャと曲を変えてみる。
フィットしない。
記事をコロコロ、曲をコロコロ、気分をコロコロ・・。
オリャァ何モンだ? みたいな感じ。
何をしてもだめ、と思ってしまった僕は、ついに毒に手を出す。
静岡を過ぎたようだ。


実は今日は記念日だ。
苦い思い出の。


iTuneのリストから、「その曲」をクリックする。
恐る恐る。

ピアノのイントロが流れ出す。ゆったりとしたアルペジオ。
そんなことは分かっていた。
僕はあわてて周りを見回す。
メロディは続く。とても美しく、とても暖かく。

うるさい一団が記念写真を撮っている。
PSPの中での対戦は続いている。
前の席の人はさらに椅子を無理矢理ぐいぐいやっている。
何なのだろう。
そんな風景もメロディと重なっていく。

僕は、今、賑やかな風景に囲まれている。
穏やかな秋の光が差し込む車内で、今日を過ごしている。
そのことをうれしく思えてしまう。


古傷も、大切なひとコマ。
踏ん張っても消せないし、ごまかさなくていいじゃん。


新幹線は、
名古屋での少し長い停車からゆっくりとした助走で走り始める。
僕は、そのスピードに合わせるように、
もう一度のそのイントロを滑りださせる。
二回目のお化け屋敷は、ただただ美しく心地よかった。





・・シートに深く座りなおした僕は、ふと不安になる。
そう言えば僕は、徹夜明けの空港のロビーの椅子で”オチて”しまい、
飛行機の出発を遅らせてしまったことがあった。
またも発見した古傷。こっちのはかなり現実的だ。
ホットコーヒーでも注文しようか・・。




posted by 白井麒麟 at 10:43| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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