2008年02月26日

飴玉





「あっ、全部なくなってる」


テーブルの上には、空っぽになった
イーマのど飴のドーム型の容器が転がっている。
小五の娘は、三歳の弟”ナーくん”をギロリ。


「これあたしのだったのに。あんたでしょ」


ナーは「ボク知らない」とばかりに目をそらす。
うちの娘は食べ物のことにうるさい。
誰に似たのか、そういう子だ。

うーん・・

朝から始まったきょうだい喧嘩の行方を心配しながら
僕はガチャガチャと朝食の洗い物を進める。


娘は
「とっても楽しみにしてたのに。まだ半分しか食べてなかったのに。」
とか
「あんたさっき口の中でゴリゴリ音させてたよね。謝ってよ」
とか言って弟を責める。


ナーはちょっと焦った顔をしながら、それでもまだ
何食わぬ顔で踏ん張っているのだが・・


見かねた僕は
「ナーくん、謝った方がいいよ。食べちゃったんだもんね」
と言ってみるのだが、弟の方も強情だ。
誰に似たのか、そういう子だ。


時計を見ると七時半を示している。娘の登校時間だ。
『もしかしたら逃げ切るのか?』


「あんたでしょ? 早く謝りなさいよ」


娘の怒濤の攻撃を避けるように、弟はこちらに二三歩進むのだが
その先にいる僕が、どうも味方ではなさそうなことに気付いたのか
そこで動かなくなる。
そして・・

「う・・」


口元が次第に下がっていき・・


『あっ、子ども泣きだ!』

と思った瞬間


「うえ〜んっ うえ〜ん!」


目が細くつり上がり、口はゴリラっぽく開いている。
見事なまでの「子ども泣き」だ。
そして次の瞬間、僕と娘は、同時に「あっ!」と声を上げてしまう。

弟の口の中。

半分開いた隙間から
まだ、まん丸いままの、白く大きな飴玉が
お目見えしてしまっているのだった。


「きゃはははっ」


意地の悪い娘は、それをしばらく笑ったあと、
意外にあっさりとランドセルをかついで「行ってくる」。


僕は、まだ子ども泣きを続けている弟を見ながら、
『そう言えば、結局こいつ謝らなかったなぁ』と。
果たして、勝者はどちらだったのか・・
なんてことを思いながら、僕はタオルで手をぬぐい
『やれやれ』と弟を抱き上げたのだった。


それにしても強情なきょうだいだ。
きっと誰かに似たのだろう。






posted by 白井麒麟 at 23:52| 東京 ☁| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月24日

春一番が吹いた日






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posted by 白井麒麟 at 04:34| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月21日

カツカレー




チューリップ.JPG




海外にいると、日本のご飯が恋しくなりますが・・

今回の旅行では無性にカレーが食べたくなったもの。


ずっと引きずって

やっとありついた、築地「スイス」の一品。

「伝統のカツカレー」を

がっつりいただきました。




カレーライス.JPG



posted by 白井麒麟 at 01:14| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月16日

見えないボタン






「最後のボタンは自分で押したんだから。しょうがねぇよな」



営業の帰り道。
会社の先輩が、吹っ切るようにつぶやく。神田周辺のビルは少し背が低いが、それでもこの季節、その影は長く伸び、風が肌寒い。

先輩の息子さん。大学受験を終えたばかりとは聞いていた。東京の、たくさんの大学を受けたのだが、今のところよい結果が出ていないらしい。長い道のりを早足で歩くリズムが先輩の口を弛ませる。



「『こっちのボタンがいいよ』って、息子の手を引いてボタンの上に乗せたんだけど・・」



推薦入試のことだ。とてもいい大学で、受験すればほぼ合格は見えていた。でも、その大学は東京ではなかった。



「『これ押した方がいいんじゃない?』って言ってるのに。すうーって手が別のボタンのところに行くんだもんなぁ。・・でも、だからといって親がボタンを押してしまったら、その子の人生は終わりだからなぁ」



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考えてみれば、みんな目の前には、目に見えないたくさんのボタンがあるのだろう。

とっても気軽に押せるボタン。
そこにあることに気付かないボタン。
絶対押したくないボタン。
押したくても押せないボタン・・。
どれも、答えは押してみないと分からない。トランプのカードを引くように。


人生の中盤戦に入ると、押さない方がいいボタンの見分けは、かなりつくようになる。青い色をしているのか、それとも赤いのか。
一方で、押したくても押せないボタンも増えていくのだろう。
そのボタンは、虹色のように美しく見えて、でも押すのは怖い、とか、環境が押すことを許さない・・とか。
そして、やがてそのボタンの虹色は、黄色や赤に見えてくるのだろう。



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その先輩は、ボタンを押さない人だ、と思う。
中間管理職、単身赴任、家族、持ち家、仕事の重圧、上下からの心ない言葉、内外からの厳しい評価・・。職場をともにしてからの二年の間、僕がみる限り、彼はとてもつらい環境にあった。
娘さんが大きな手術をすることになった時には、土日ごとに遠い病院に夜行バスや鈍行電車で通い詰めた。バスの中と病院のベンチで睡眠をとり、月曜日には「今帰ってきたわぁ」と疲れた表情で、数字の並ぶ紙の置かれた会議の席についた。

彼は、与えられた環境にひたすら耐えているようだった。
そして、その代わり、色んなことをした。

何もない土日にはいつも都内を自転車で走り回り、無料のクラシック演奏会をはしごした。

仕事中は、いじられキャラの後輩に、時々イタズラをしかけた。
机の引き出しに「生きた蝉」を入れておいたり
クリアファイルに「レタス」を一枚挟んでおいたり
名刺のプラスチックケースには、「海老の姿焼き」をしのばせた。
害の少ないその時限爆弾に、後輩は時々「きゃあっ」と声を上げた。


「迷うことなく、ボタンは、押さない」


四十八の、男の、家族持ちの、サラリーマンの、彼なりの生き方。
それは、ちっとも臆病には見えず。
むしろ、かっこよく思えた。



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彼は、間もなく地元の本社に転勤する。
唯一、彼が押したボタン、それは地元への転勤希望だった。
その理由は、本人しか知らない。
そして・・
自分の意志が正しいのかどうか。
目的到達のために押すボタンは、これでよいのか。
そもそも自分が本当に希望しているものは何なのだろう・・とか。
自分自身の問題になると、さらに分からなくなるものだけれど。

こんな時は、隣にいる人のことをとても知りたくなる。
色んな経験を自分の中に修めている人の言葉を聞きたくなる。
自分の意志に耳をすますために。




posted by 白井麒麟 at 16:46| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月12日

BGM






グアムは、アメリカだ(言うまでもなく)。



正確にはアメリカ合衆国の準州(自治区)というらしい。
だからかどうか知らないが・・
公共の乗り物にBGMが鳴っている。

薄水色のアロハから、太い腕のタトゥをのぞかせた色黒の運転手。
ファンクっぽい音楽をガンガンにかけながら大きなハンドルを回す。
それが現地の路線バス。

二階部分がオープンのバスでも、二階の随所にスピーカーが取り付けられている念の入れよう。おかげで僕は、強風におでこを丸出しにしながら、なつかしのマイケルジャクソン♪スリラーにのせて、息子と一緒にヒューヒュー言っていたのだった。



そして・・BGMは潜水艦でも鳴っていた。



現地には、潜水艦による海中遊覧を、観光客に楽しませる企画がある。


潜水艦2



最初は珊瑚の海にふさわしい、穏やかな音楽。
そして、次第に水深が増すにつれ、激しさを増し・・


潜水艦1



「では、これから水深四十メートルまで行きます!」

そのアナウンスが入る段階では、ハリウッド映画級。
狭く暗い船内で、ターミネーターのような音楽が鳴り響くと・・
そこはまるでTDLのアトラクションのよう・・
逆に「今、深海に潜っている」現実感は一気に薄まってしまう。


水上に上がっていく時には、もちろん「苦難の末の勝利」的な・・

・・まあいいか、と。



「ドラマティック」と、「クール」。
そのスタンスは確かに、生活のスパイスになる。
それから、少し自分を好きになれるかも知れない。




バスの運転手のちょいと粋なシルエットと
息子のバスの二階ではしゃぐ姿を思い出しながら
そんなことを思うのだった。






バス二階2.jpeg



posted by 白井麒麟 at 22:37| 東京 ☁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月11日

チャモロ







南の島、花、海という・・

グアムという日本から比較的近い海外は

ホテルのドアに「引」「押」と漢字が貼り付いているほど

ニッポンナイズドされているわけで・・

タモンビーチ、恋人岬、チャモロ村、スペイン広場と

日光に行ってサルを観るのに等しい道程は

ジェームスボンドのような人生像を潜ませた男の子には

窃盗をやらないルパンという・・



南の島、花、海という写真により

グアムを表現した人の数の中に

自らを投入するもよし



だがその前に

ブロガーとして魂に触れる一つの言葉をここに

本質から遠のくことを怖れず



一五二一年、スペイン人マゼランによる

西洋初の来訪(発見と人は言う)から

四百九十年近くという・・

その時の蓄積の

無数膨大なログデータの一つとして

ここに示さん

「なんでやねん」という・・

手の甲の動きとともに












チャモロ.jpg
posted by 白井麒麟 at 23:55| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月06日

いとまごい





ちょっくら行ってきます。

五日間ほど、旅行に。

PCも置いたまま。


仕事、生活、その他・・


旅行中は忘れて

空っぽに出来るかな?





踊り疲れて
posted by 白井麒麟 at 00:21| 東京 ☁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月04日

雪玉製造器






休日 + 雪 + 幼児 + 妻が風邪・・

             =「パパが何とかしろ」



BUT




だるい + 寒い × 後処理大変そう

             =「やめようかな(*_*)」



とはいえ・・




   「やめようよ」 < 「しょうがねぇなぁ(~o~)」





子どもの帽子、手袋、コート・・

そして。あれは、どこだ?

そう。確かキミがいたはずだ。



スキーもご無沙汰の我が家。
あまりにも長い間出る幕がなかったために
「僕ってナニモノだったっけ・・」とつぶやきながら
うつむいていたキミを
おもちゃ箱の底で、ついに発見−−−。

「 パカッ パカッ 」

なんと勇ましい音だろう!




結局見つからなかったのは、
パパの手袋。

「雪だるまくらいなら」と
素手を突っ込み十秒ももたず・・



「・・ナー君、雪だるまは、もうトレンドではないのだ」



じゃーん、と言って、僕はキミを取りだしたね。



そんな僕に文句も言わず、
息子の手に渡ったキミは、
見事にその役目を果たしていたよ。


そう。
なんなら、カッコよかったよ(笑)




ああ、助かった。
雪玉製造器くん。




雪玉製造器








posted by 白井麒麟 at 23:43| 東京 ☔| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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