2008年01月07日

これで今年が始まった






年末年始の長い休みに、すっかり身体が馴れていたのだろう。
朝から、ナーが、ぐずった。




いつまでも登園の準備をしたがらない。
半泣きしているところを無理矢理抱っこで出発。
地面に下ろすと泣くから、ずっと抱っこで・・



「ナーくん、初めてのおつかいってテレビ観たよね」



身体がピクリと動いたのだけど。



「あの男の子覚えてる?
泣きたくても『俺は男だっ』って頑張ってたよね?」



僕の肩に乗っかった首がイヤイヤをする。
ナダメてもスカシても、ただ、イヤイヤをするばかり。
そして、くしゃくしゃの顔で



「ママがいいのぉ…」



やれやれ。



「そんなこと言っても、今ごろママはもう会社で・・」



と言いかけて、



『そんな事、分かってて言ってんだろうな・・』



彼が言っているのは「今」のことではなく
「ずっと」のことなのだろう。



保育士さんに引き取ってもらう。
出来るだけ平然と、素早く、場を離れる。
こういう時の中途半端な優しさは、本人には残酷だ、と思う
振り切る。

泣き声が背中に刺さる。



**



やがてたどり着いた駅。


正月明け。
いつもの朝のラッシュ。
いや、いつも以上に思える。


どの顔も殺伐として見えて・・
その顔の数が、あまりにも大量で・・


足がひるむ。






ミヒャエル・エンデの「モモ」。





灰色の帽子
灰色の葉巻
灰色のトレンチコート。
そして身体の色も、すべて灰色の集団。


物語の中のその男たちは、
他人の時間を奪うことで命を延ばす
『時間泥棒』たちだった。



人に
「時間の無駄を省くこと」「効率よく生きること」を
推進して・・

人の世から
のんびりした時間を、
友達との、意味はなくとも落ち着く時間を
消し去っていき・・

その時間を盗んで生きる
『時間泥棒』たち。




わけもなく、そのイメージが浮かんで
オーバーラップして・・





・・いやいや。





僕はブルブルっと、気を取り直す。
身体に空いたセキュリティーホールを修繕するように。




そして、改札に向かう人の波に合流する。




『これで今年が始まった』。






「ピンポン!」




隣の改札で

ひと際大きな音がして

スイカのタッチセンサーが赤く光る。




はじかれたおじさんは

険しい顔で

とても険しい顔で

狭い通路を引き返していった。





路地






posted by 白井麒麟 at 23:44| 東京 🌁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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