2007年09月17日

そうそう




実験的写真スペースは・・



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posted by 白井麒麟 at 10:30| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

房総の風





「将来のことを考えて、あれこれ悩むな」
「他の場所がいい、なんて思うな」
「目の前の日々をしっかり過ごそう」


そういう気持ちが大好きだったのだけれど。



房総車窓



房総の湾岸を走る。
軽い渋滞。
後部座席を見ると年の差きょうだいが寝息を立てている。
薄目を開けて寝るくせのある長女は、今日も白眼を見せていて
それが、朝ホテルのテレビで観た妖怪漫画を連想させる。
助手席の妻も寝ている。

僕も寝る・・わけにはいかない。
嵐のハピネスのサビが流れるカーステレオをオフにする。
ハンドルを握り直す。


学生時代のバイトは、いろいろなことをした。
いろいろやったということは、それだけ「辞めた」ということだ。
辞める感覚ってどうだっけ。


一番長かった木屋町のショットバーと、ラジオのAD。
どちらも楽しく、ずるずると・・長引いた。
最後は卒業がヤバくなって、せっぱ詰まって辞めた。
一つのことを終える感慨や、それがない生活の不安は
「就職活動」と「卒業」という大きな課題に
自然に絡め取られていった。


そうだ。ずるずると・・。


『それのどこが悪い』
『何世代か前のお百姓さんがそんなことを考えたのか』


自由だとか、夢だとか。
家族だとか、生活だとか。


選択可能な世の中。
広告会社のマーケティングでは「人生の自由化」と呼んでいた。
職業選択。家族選択。
どう生きるかをカスタマイズ?
そんなのじゃない。
そんな簡単に考えてるわけじゃない。



カメの海


「とっても楽しいねぇ」


水族館の生き物を観ながら息子がつぶやくと、また思考のどうどうめぐりが始まったりして。「選択」というのは本当に難しい。


分岐点。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。


双眼鏡
posted by 白井麒麟 at 10:21| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナタ愛のテーマ/エンニオ・モリコーネ




「トルナトーレ監督の映画が、東京で公開されているらしいよ」

今朝の母からのメール。

僕が大好きで、後に母も大好きなことが分かった映画
「ニューシネマ・パラダイス」
そのトルナトーレ監督。



「観に行ってみるよ」と返信を打ちながら、
いついけるかな、と手帳を開く。




**



最近、休日を使って写真や音楽の整理をしている。

先週、音楽のフォルダの中で、少し懐かしいファイルと出会っていた。
ダブルクリックするとiTuneが立ち上がる。
ピアノの音が流れ始める。


ナタ愛のテーマ/エンニオ・モリコーネ

ニューシネマ・パラダイスの挿入曲。



「・・うわぁ、やっちゃってるなー」とツッコミを入れる。
もちろんモリコーネ大先生の曲にではない。
僕の編曲に、である。



もう十年くらい前のこと。
僕はPCを使っての作曲にハマっていた。
我流に限界を感じ、オーケストラの編曲を学ぼうと、いくつかスコアを買ってきた。その中に、「ナタ愛のテーマ」の弦楽四重奏スコアがあった。

僕はシンセと(今はなき)opcode社の名作ソフトvisionを使って、楽譜を入力していく。

第一、第二バイオリン、チェロ・・
譜面が読みにくいため、最後に回したビオラのパートを入力した時、妙なことが起きた。

知らないうちに僕は泣いていた。

言葉では表現できない、編曲の美しさとでもいうのだろうか。
もちろん、ニューシネマ・パラダイスは十回以上観ていたので曲自体はよく知っていた。それでも、そのビオラワークは知らなかった。
単体で聴くとわけの分からない音の動き。それが主旋律と重なったとき・・。
何とか最後まで入力して、バカみたいに何度も聴いて、あほみたいに何度も泣いた。

「何かあった?」

外出している妻からの電話に、ろくすっぽ答えられなかったのを覚えている。それくらい衝撃を受けていたのだろう。
(残念ながら、そのデータは旧MACとともに、田舎に眠っている)


で。


その翌日一気にヤッタのが、こいつだ。
今風にはオマージュとでも呼ぶのだろうか。
ナタ愛のテーマをピアノアレンジしてしまったのだ。



『演奏不可能?
いや、世界一のピアニストだったら弾ける』とか。



今聴いてみると、やっぱやっちまってる感がある。
でも、僕の作る多くのものにはない迫力がある、ような気がする。
そこは大先生に滅多打ちにされた直後。
その興奮のなせる業なのでしょう。








僕は当時、このアレンジをテープに録音して
色々な人に聴かせてみた。

妻は「何か、激しいな・・」
母はノーコメント。
ただ一人「これ、いい曲だね」と言ってくれた姉が、とてもいい人に見えたのだった。




ところで、そのスコアにはとても面白い解説文が付いていた。
確かこんなことが書かれていた。


「モリコーネの曲は、人間の言葉のようだ。『トトとアルフレード』は、バイオリン=トト(子ども)、チェロ=アルフレード(おじさん)と考えると、まるでトトがやんちゃをして回り、アルフレードが怒ったり諭したりしているようなメロディになっている・・・ナタ愛のテーマは、青年になったトトが、片思いの女性に、胸に秘めた悲恋を伝えているような・・・」



さすが天才。

母が勧めてくれたトルナトーレ監督の映画は
「題名のない子守歌」というらしいのだけど、
これも音楽はモリコーネ氏?
そうだったらうれしいのだが。

大先生は、来年八十路に足を踏み入れるらしい。




posted by 白井麒麟 at 04:34| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

畜生、の夜





銀座。


金曜の二二:三五。


落書きだらけの狭い階段を降り、さっきまでキーボードを叩いてた手で木の扉を押し開ける。
地下のすえたような空気。


「二枚からのチケット制です」


爆音のラテンのせいで良く聞こえない。何度か聞き返したりしてちょっとかっこ悪い。


「二枚!」


三百円バーのくせに、戻ってきたのは三百六十円。
『四十円は?』
まあそんなにボラれてないし‥



暗い店内にぎっしり起立。
カウンターの隅のわずかな場所。ハーパーソーダはちゃんとしてるが、ミックスナッツは柿の種含有率四十パーセント。

うるさい、狭い。

ラテンの爆音。悪ふざけした外人の一団の叫び声。
外人に話しかける五十がらみの女。カウンターを振動させるだれかのケータイ。

なのに。




『あぁ。なんだか、心地いい』




十時半まで残業したって、ちっとも終わっちゃいない。この一週間ずっとそう。その時間まで残業したら自宅に着くの十一時半って知ってる?
台風がきたって、ずぶ濡れで子供送って、定時出社。(恨むぞ妙に頑強な京成電車)





うるさいくらいがちょうどいい。






「お前、なに頼んだの‥」
「えっ」
「だーかーらー‥」


もう十分もビールをちびちび飲んでいる後輩が待つのはソーセージピザだそうだ。来る気配も作っている気配もまったくない。


こんな場所でも女性は連れだって歩くらしい。六人のOLたちがグラスを高く上げながら人の間をすり抜ける。ちょうど後輩の背後をぬける時、おしげもなく胸が次々と触れて行く。小さくて丸まった後輩の背中に。

十二個も?

お前、わざと通路狭めてるだろ‥。




「‥おい‥」
「なんですか?」
「ナンパしてこい」
「ホンマですか? 僕行きますよ」
「嘘。帰れなくなる」



ケータイの時刻表示をチラ見。二二:五十



「ホンマ僕行きますよ」
「だから帰れなくなるって。次回はマジで行け。八時にくるから」



後輩はピザの到着にしびれを切らしたのか、ビールをぐびっ。



「いやぁ。僕言われたんですよ。先週行った札幌のキャバ嬢に。痩せられるまでは‥って頑張るよりも、じゃんじゃん女に声かけろって」



そう言って遠くを見つめるお前だが、ワリい。
言ってることちっともかっこ良くねぇ。


そうこうしてると、カウンターに店員がやってきて「お待たせしました」。

げっ。

ポテトチップス・・・・・。





「行くか」





銀座。


金曜の二三:零五。



パチンコの景品交換所の列に邪魔される。

路上の怪我人がタンカで運ばれる。

たどりついた地下鉄の入口は、そういや反対、新橋方面じゃ帰れない。


仕事しかなかった一週間。
トラブルの集中砲火の一週間。
それが終わる。
こんな風に。



‥畜生。






優しいおじさん


(写真は三百円バーではありません。笑)



(・・って、これをケータイで書いてたら終電で一駅乗り過ごしてしまった! タクシー代 千三百六十円也 

あとハーパー四杯いけた  ・・畜生!!)







posted by 白井麒麟 at 01:20| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月03日

今まで出来なかったこと



出来そうで、出来なかった。
自分のwebページを作るということ。

やり方が分からない。
取説が面倒・・

この便利な世の中でも
自分が今本当にほしい情報にたどり着くというのは
意外に困難なもので。

それでもヤルのは結構しんどいもので。
そんなこんなで今までずるずる来ていた。


そんな訳で。


初めてのwebページを作ってみましたとさ。
何のことはない、
このブログの「写真コンテンツ」でしかない
マイホームページ処女作。

(左カラムの「日々の寫眞」をクリックいただけると幸いです)
(ちなみに一部工事中です)



パソコンの隙間で叫ぶ






posted by 白井麒麟 at 21:24| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月31日

サムズアップ


起動したばかりの頭でリビングに出る。
ソファに寝転ぶ息子。片手におもちゃの電車、片手は口に突っ込んでいる。指を吸うチュウチュウという音。よかった、生きてる。

「もう、つらかったんよ。何回も泣いて起こすんだから‥」
「熱は?」と僕。

三十八度六分、と妻は言いながらトーストの焼け具合を確かめている。

キッチンの換気扇。
白い煙を吸い込んでいく。
僕が吐き出した煙は部屋をふわふわと漂うこともなく、出した瞬間に騒音を立てる穴に集約されていく。そんなことを不満に思うくらい、僕の起動はノロく、鈍い。

『テイケツアツのせいだ』。

そうだ。よく考えれば分かるじゃないか。
寝起きがつらいのも、会社に行かなきゃいけないのも、エロいネットサーフィンにハマりそうな勢いなのも、みんなみんな、テイケツアツのせいだ。
僕はこの世のどこかにいる悪の権化テイケツアツをイメージしながら、そいつをにらみつける。


びゃーんっ


息子が、かばんを肩からぶら下げた妻にすがりついている。

「もう・・ママ遅刻しちゃうよぉ。
泣いたら、黄色い電車、買ってあげないよ‥」
「こら、そういうバーターすんなっ」

ちょっと偉そうなことを言ってみたりする。
以前だったら、するどい妻の眼力に打ち抜かれているところだが、
目下形勢は逆転している。

妻は泣き叫ぶ息子を僕に渡して、申しわけなさげな顔で「行ってきます」。

やれやれ。
渡されたわが子はひどく熱い。
肩でわんわん泣いているものだから、ワイシャツが・・。


「・・にしおかぁ、すみこだよ」

何とか気分を変えてやれないか、と思ってのことだが。

「朝からわんわん泣いているのわぁ、どこのどいつだい?」

無理らしい。

『泣いたら黄色い電車買ってあげないよ〜』
この場面でこれを言えたら俺すごい、と思ってふと笑う。


とにかくファミサポだ。

(保育園は熱のため預けられない)

連れていけば、きっと何とかしてくれる・・はずだ。
善の権化、ファミサポ。

息子に靴をはかせ、荷物を持って家を出る。

エレベーターを降りる。
何だか今日の風はやさしい、と感じる。

「ナーくん」

僕の肩でぐしゅぐしゅ言っている息子。

「ナーくん、五代雄介はこんなことじゃ泣かないよ」

五代雄介――。
もちろん仮面ライダークウガのこと。
もう何年も前のテレビだが、僕は最近でもDVDで繰り返し観ている。
もちろん三歳の息子にも押しつけている。

五代雄介は、困難なことも笑顔で乗り越える、簡単に言えばそんなキャラだ。
そして、その配役のオダギリジョーは、みんなを守ったあと、
いつもにっこりとサムズアップ、親指を立てるのだ。


「ナーくん、雄介は泣かないよね」

息子のぐしゅぐしゅが一瞬止まる。

「そうそう。その調子だよ」

息子は初めてこちらに顔を向ける。

「そうだ。ナーくん、今日バイバイする時に、サムズアップしようね。
やってごらん・・」


***


善の権化ファミサポ、つまり一時預かりしてくれる一般の民家。
スズキのおばあちゃんは本当に善の人だ。
無理を言ってすみません、と息子の靴をぬがす。

「いえいえ、いいですよ。じゃあナーくん、お父さんにイッテラッシャイって」


「イッデラッジャイ」


いつものふざけた調子で息子が言う。
ん? 何か違う。


「ナーくん、今日は違うだろ」


そう言って僕は、グッと親指を立てる。

息子は一瞬、びっくりしたような顔をしたあと、
泣きはらした目に不似合いな笑顔で
もじもじと、親指を僕に突き出した。




posted by 白井麒麟 at 13:28| 東京 🌁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月25日

「麻衣」に挑戦





何だかストレスがたまっているようで。

こんな時は、何かする。



昔…

テレビドラマの中の松田聖子は

「えいっ えいっ」とかけ声をかけながら

バットを持って素振りをしていたものでした(笑)



パチンコ?

酒を飲む?

お金もないし…


ギターを弾くのも面倒くさい感じがした。

でも弾いてみたら

やっぱり落ち着くのでした。



今回挑戦したのは、やはり岡崎倫典作曲の

「麻衣」。



キムタク出演の

「若者のすべて」というドラマで

挿入されていた曲。



川崎の工業地帯で、純粋に生きようとする

若者たちの姿。

その背景に…

煙突と

夕日と

この曲があった。







いつものように

数カ所間違えて

キリバリした

ローサクです(笑)




posted by 白井麒麟 at 18:40| 東京 ☁| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月22日

黒い十字架






N700




数週間前の東京駅。

短い帰省からの帰り道。
小五の娘がスイカ(JRのプリペイドカード)をなくした。

数分前の僕の言葉。

「ジーンズのお尻が入りにくいなら、
     かばんのポケットに入れときなさい」

そのかばんのポケットに、穴が空いていた。



**



昨夜、娘をしかり飛ばした。

夏休みの宿題を全然進めていないのに
SMAPのテレビを観るといって聞かないのだ。
娘は何度も嘆願し、玉砕し、泣いて、フテた。
そして、部屋にひきこもった。

今朝、寝起きがすっきりしなかったのは、
何となく解決感のなさを引きずっていたからかも知れない。
自分がそんな気持ちの時は、相手もそんなものだ。

「そろそろ起きろよ」

わざと、少し高いトーンで呼びかける。
娘の部屋に足を踏み入れる。
娘が長くなって寝ている。
その横の床には・・
身体は一瞬にして硬くなり、目は床の一点に釘付けになる。
そこにあるのは、黒い十字架だった。
割り箸で作ったらしい。
墨汁の入れものが近くに置いてある。

「おい、なんだこりゃ」

娘がのろのろと身体を起こす。

「・・地獄少女の・・真似。」

「・・それじゃあ、これで呪い殺すのか」

誰を、とは聞かない。

「そこまでじゃないけど・・」

不穏な感じを一時保留し、僕は、保育園用のリュックを背負った息子の手を引いて、玄関を出た。

「ママ(妻のこと)に言った方がいいかな・・」

息子を預けて通勤電車に乗り込んだあと、
僕は窓の外をぼんやり見つめる。
しばらく考えたあと、僕は妻には何も言わないことに決めた。
『これは、結果的に無用の心配をかけることになる』。
そんな風に思えたのは、僕自身の、とある記憶に行きあたったからだ。

そう。僕は、その十字架に見覚えがあった。
とても妙な話だが。



**


滑り台


ちょうど、娘と同じくらいのころ。
その夜、僕と姉は、きょうだい喧嘩をひどく父にしかられた。

中国地方の都市郊外の団地。
僕の家には、まだアルミサッシという近代文明が訪れておらず、
僕たちきょうだいの声は、近所にも大きく響いていたことだろう。
激怒した父は、僕と姉を庭の物置に放り込んだ。
そして、外側からガチャリと鍵をかけた。

「パパ、ひどおねえ?」

暗闇に目が慣れてきたころ、
取り繕うように僕が言う。
狭い。
さっきまで、喧嘩をしていた姉と腕が触れあっている。

「・・そ、そうよな。ここまでせんでもええのに」

姉も同調する。
同胞と化したおバカなきょうだいは、
しばらく、父を共通の敵にして時間をつぶす。
しかし、待てども待てども、父も母も一向に助け船を出す様子はない。

『もしかして、朝までこのまま・・』

そう思うと、物置の仮住居は一気に居心地の悪さを増す。

段ボール箱の角が腰に当たって痛い。
暑くこもった空気がからみつき、全身を汗が伝う。
もし戸の外に誰か知らない人がいたら、なんていう妄想・・

「パパッ! パーパッ!!」

呼んでも返事はない。
何度も、何度も呼ぶ。
物置の壁と、家の壁。
張り上げる声は誰にも届いていない気がする。

僕はいつの間にか、しくしく泣き始めていた。

気がつくと、姉が手に何か持っている。
どこから見つけたのか、それは黒いペンキとハケだった。

「こうしてやる・・」

姉は、段ボール箱にハケを滑らす。
それは、短い呪いの言葉だった。
暗闇に浮かんだ不気味なその言葉は、闇を一段と暗くした。

「お前もやれ」

ハケを姉が差し出す。
僕は、肩をヒクヒクさせながら受け取る。

『こんなことして、いいのかな・・』

どこかでそんなことを思っていたのかも知れない。
でも僕は、ハケを滑らせた。
横にスッ、縦にスッ・・

呪いの言葉の横に僕が書いたのは、黒い十字架だった。



**



『大丈夫。僕もあのあと、悪いことをしたと思ったし』

帰りの電車が家に近づくころ、朝と同じように、
僕はそのことを考えていた。
すると偶然にも、ある暗示的な事実に行きあたった。
それはまるで、黒い十字架が、白い十字架に変わるような、
不思議な連想だった。
そして、僕にとってはとても大切なこと。



チャーチ



それは、数年前。僕がまだ記者だったころ。
とある取材現場で聞いた、偉いシスターの講話だった。


  −−ある小さな男の子の話です。
  その男の子は、とてもおじいちゃんっ子で
  大好きなおじいさんにいつも遊んでもらっていました。

  ある日、男の子は食事の態度のことで、
  おじいちゃんに注意されます。
  男の子が素直に話を聞かなかったことから、
  おじいちゃんはその子をきつくしかりました。
  男の子は、大好きなおじいちゃんから否定されたことがショックで
  つい言ってしまうんですね。

  「もう、おじいちゃんなんか嫌いだ。
   おじいちゃんなんか死んでしまえ」


たくさんの目がシスターに注がれる。
聴衆はみな小学校の教諭。
カトリックの小学校での「生と死の教育」の研修会。


  −−そしたら、しばらくたって、
  おじいさんが本当に死んでしまったんです。
  おじいさんは、以前から重い病気を抱えていたんですね・・。
  ・・すると、その男の子はその日から、人が変わったように
  口をきかなくなってしまいました。

  「僕があんなことを言ったから、
      おじいちゃんが死んでしまった・・」
  「僕がおじいちゃんを殺してしまった・・」

  その子は、おじいちゃんの死、というものに責任を感じて
  誰にも言えないまま
  子どもなりの鬱の状態に・・なってしまったんですね。


教諭たちの、つばをのみ込むような音−−。


  −−小さな子どもというのは、現実と空想の区別が
  付きにくいんですね。
  ですから、みなさん。もしそういう場面があったら、
  きちんと教えてあげてください。

  「おじいさんが死んだのは、病気のせいなんだよ」
  「おじいさんが死んだことと、きみが何か言ったことは、
   全然関係ないんだよ」



**


僕は、思い出す。
黒い十字架を書いたあとの、あの気持ち。

夕暮れまでキャッチボールをしてくれたり
ドライブに連れて行ってくれたり
プラモ作りを手伝ってくれたりした
そのパパを
そのパパの命を、裏切ってしまったような
申しわけなさ。

三十年近くたっても消えない
申しわけなさ。


**





「あれ、どうなったの?」



家に着くといきなり娘がせっついてきた。

「なに?」
「・・スイカ。取ってきてくれた?」
「どうかな・・ジャンッ」

僕は、今日警視庁遺失物センターから引き取ってきたばかりの
スイカと定期入れを、かばんから取り出した。

「・・本当にあったんだ」
「・・」
「・・」
「おい」
「はっ?」
「お前、何か言うことがあるだろう」
「ああ。・・ありがとう」
「・・よし」

やれやれ。

黒い十字架を見つけてから、約十二時間。
この間に僕がどれくらいの心の旅をしたのか、
いや、せざるを得なかったのか
娘は知らない。

『パパは、案外疲れたんだぞ・・
こんな長文になるくらいに(笑)』


いや、娘は娘で、今日一日旅をしていたのかも知れない。
せっかくだから・・
旅をしてくれていれば、うれしい。







紫

posted by 白井麒麟 at 01:42| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月15日

ゆりかもめの風景(Quick Time Movie)






「ゆりかもめ」に乗った。




てをつないで




東京タワーのシーンだけをアップしようと思った。
気がついたら編集して、2分くらいになってしまった。



そうなると音楽も付けざるを得なくなり・・
作った方がいいのは分かってながら。

映画「打ち上げ花火」のサントラから
REMEDIOSの An Evening Walkを拝借。





まっすぐ進まない「ゆりかもめ」は
同じところをくるくる回っているような気がして
普段はいらいらしたりするのだけど。


きっと、ビデオカメラを持ってたせい。











(Quick Time形式なので観られない方はごめんなさい)





posted by 白井麒麟 at 03:28| 東京 ☀| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月14日

ゲルマラジオ

アキバの街を走り回る。

ゲルマニウムラジオ。その部品を手に入れたい。
夏休みの自由研究のために。
秋葉原に行けば売っているとネットに書いてあった。

夕暮れ時、雑踏、メイド服の娘たち。
その中を小五の娘は無言でついてくる。

「ラジオデパートとラジオセンターのどちらでもあるよ」

まずはデパート。おじさんが親切に教えてくれる。
要するに「ここにはない」ということだった。

「センターにあると思うけど、7時にしまっちゃうよ」

そんなに早く閉まるのか。
時計を見ると18時50分。お台場冒険王で時間をとられすぎた。

横断歩道はやけに信号が長く、人がうじゃうじゃいる。
娘が赤信号をにらみながら足をトントン言わせている。

狭い通路。
わけの分からない小さな部品をこぎれいに整頓したような小店が
ぎしぎしに集まっている。センターとは店の集合体らしい。

おじさんが教えてくれた店。
店員が客と長話をしている。
機械の配線のことを口だけで説明しているものだから
要領を得ずなかなか終わらない。
しびれを切らし、話しかけてみる。

「すみません。ゲルマラジオの道具を売ってると聞いたんですが」

「・・うちにはありませんよ。そーね。
置いてる店も全部しまっちゃいました」

! まだ7時にはなっていないというのに・・
おじさんの眼鏡がいたずらっぽく光る。

娘と二人、舗道で途方に暮れる。
中古のDVDやら電子手帳やら。
店先から賑やかな音。

暮れかかった街のビルネオンをぼんやりと見る。
日本で一番の電気街。
僕が今ほしいものが一番手に入りやすい街。
それなのに、この街はまるで迷宮のようで
探し物が見つかる気がしない。

そうして、7時も過ぎていく。

「さっき、ガードレール飛び越えた人がいたね」
「コスプレの人っていうの? 初めてみた」

そういえば、娘は秋葉は初めてだった。

「・・行くぞ」

僕はもう一度センターに向かった。
別の店の軒先でお兄ちゃんが棚の整理をしている。

「すみません・・ゲルマラジオの・・」

振り返った顔は幼く、僕は頼りなく思った。

「ゲルマ・・ああ、無電源ラジオですよね。こっちですよ」

狭い通路を通って案内された先は・・
さっきの意地悪おじさんの隣の店ではないか。
確かにもう商品棚に布をかけて店じまいしている。

「おじさん、ゲルマラジオだって」

お兄ちゃんの声に奥にいたおじさんが振り向く。
ちょっと考えて、「その真ん中あたり」と指さすと、
また背中を向ける。
お兄ちゃんが布をめくると・・

「ああ、ありましたよ。
これがアンテナ、これがリード線とバリコン・・」

お兄ちゃんは、部品を一つひとつ手にとっていく。
ネットでみた通りの部品が、全部ある。


「ありがとう」

頼りなげに思ってごめん。

喫茶店に入ると、娘は
待っていたお母さんのところに行き、
アイスクリーム盛り合わせを注文した。
そして、初めてのアキバ探検記を興奮した様子で話していた。

僕は運ばれてきたメロンソーダに、娘の三つのアイスのうち
一つの半分を浮かべた。



posted by 白井麒麟 at 14:22| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月09日

ほんの数時間



「ありがとうございます」と、受話器越しに僕。
「はい」、というだけのあっさりした返事。

数日たって、約束の日。
その日は、太陽の光と肌の間に何もないような日差しの日で、
僕は黒いスーツの中身をびしょびしょにしながらその場所に着いた。

古めかしい洋館の玄関。
その女性は、黒っぽいポロシャツと白いデニムのタイトスカート。
少し青みがかった瞳が印象的だ。美人、なのだろう。
僕が大げさに「よろしくお願いします」と言うとやはり事務的に「はい」と答えた。

営業の仕事の中には「立ち会い」と呼ばれるものがある。
自社イベントなどのとき、担当者として現場にいるという業務。
様々な関係者の顔つなぎ以外にやることはほとんどなく、
それでもいないと困る・・そんな感じ。

「もう長いんですか? そうですか」

待ち時間、僕が何度か話しかけ、彼女が短く答える。
彼女のポートレートの背景に洋館の太い円柱が見える。
こういう場面の社交辞令は何だかぎこちない空気もともなうけれど、
そういう会話に助けられることも多い、そんなことを知る年齢に僕はなっている。
そして、そういう会話をしながら、ちょっとでも会話の奥に入っていこうとしている自分に気付く。
そう。
僕は彼女に興味を持ったのだろう。

**

空気を破ったのは、彼女の方だった。
二人で建物の裏まで物を取りに行く途中のこと。

「あっちぃぃぃ」

照り返すアスファルトを歩きながら、彼女がつぶやいた。
手で日さしをしながら。
「あっちぃね」と僕は答えた。

涼しい建物の中に入り、ようやく人心地がつくと、
ビリーズ・ブートキャンプの話になった。
彼女、母親、妹。三人で並んでやっているという。
メニューの一つの動作を見せてくれるのがうれしくって、
僕は「あームリだ。俺、お腹ぶるぶるのベルトにする」と言った。
彼女は大きな口を開けて笑ったあと
「ダメです。やせるのに苦労したという思いが、リバウンドを防ぐんです」
と真面目顔。

僕ははじめ「大人の会話」をしなくちゃと思っていたのだろう。仕事で来ているし。
でも今しているのは、そのイメージの「大人の会話」ではないし、
かといって「子どもの会話」でもない。
その空気がちょうど良くって、もし制約がなかったら
そのまま彼女をお茶に誘っていただろう、と思う。

**

僕の目に、急に部屋にある一つの窓が飛び込んできた。
小さな丸い窓の形と、そこに装飾された幾何学模様が、
外の景色を切り取っていた。
部屋は暗く、外はギラギラの日差しなので、
その景色はまるで漆黒の上品な額縁を施した絵画のように見える。
僕はその窓に吸い寄せられるように近づいていった。

「この窓、きれいですね」
「でしょ。自慢の窓なんです」

近くに寄った分、景色は広がりを持った。
まだみずみずしい緑色の柳や、アイスクリーム屋のカラフルな傘が見える。
僕は我慢できなってしまった。

「写真撮ってもいいですか」

**

ほんの数時間、一緒にいただけだった。
もう彼女と会うこともないだろう。
それなのに。
「ありがとう」に「はい」と答えていた人。
それなのに。

そのほんの数時間が
僕には、今年の夏のストーリーになった。
そして、今年の夏の一枚が残った。


美術館の窓




posted by 白井麒麟 at 01:51| 東京 ☁| Comment(3) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月07日

おばあちゃん家


花と瓦

居間










中国地方の山奥の、僕の祖母の家
夏休みに駆け回った、僕の祖母の家










おばあちゃんの椅子

おばあちゃんの気配




古い人形


古時計









夏になると
また行きたいなぁと思うから
今年もやってきた



いとこたちとはしゃぎ回った日は
もう空のかなた
それでも・・?

















昔の・・











来年も
また来ますよ。
新幹線と車を乗り継いで。






蚊取り線香






posted by 白井麒麟 at 11:24| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月05日

白い気づき




東京タワー近くの路上で途方に暮れる。
休日出勤して向かった先がお休みだった。
アスファルトとビルと、夏の太陽。
開かないビルの戸をにらんだ僕に迫ってくる。

「それなら、それで」

自動販売機の取り出し口に手を突っ込んでペットボトルのお茶をとり歩きだす。

久しぶりの一人の休日、にしよう。

愛宕山トンネルの脇。何やら階段がある。
木製の幅の広い階段は、山の上まで続いていて見ているだけで汗が噴き出しそうだ。
でも、登ってみる。プチ冒険気分。
小さな森を抜けると、今度は反対側に降りる階段がある。
狭くて角度の急なその階段は、それでも踏み出してみるとまるで
空中を歩いているような楽しい気分にさせてくれる。

「ラフマニノフのCDを買う。それも渋谷で」

僕はそう決めて、虎ノ門から銀座線に乗り込んだ。

土曜の昼。
すんなり座れた上、車内が狭いこの電車は冷房が良く効いている。
僕は身体の力をようやく抜いた。

向かいのおばさんの手が不自然に小刻みに揺れている。
中風かな・・
おばさんの手に注いでいた僕の目に、急に青い光が飛び込んでくる。
おばさんの肩越しの窓だ。

「東京の地下に海があって、そこをイルカが泳いでる?」

まさか。

それは、グアム観光の宣伝だった。
地下鉄の壁面を使った、イカしたパラバラ漫画。
普通と違うのは、絵の方をパラパラさせるのではなく、
主観、つまり僕の方が移動しているから動画のように見えるという仕掛け。


それをぼんやり眺めながら、僕は、一つのことを考える。

「そろそろ名前を付けたいな」

物に− でも、ペットに−でもない。
名前を付ける対象は、「一つの心」。
ここ数日考えている。いや、もう何年にもわたって考えていたのかも知れない。
それは、人をシアワセの方向に歩ませる心の作用。方法論、といってもいい。

不幸に見舞われた人を、たくさん見てきた。

人が変わったようにわがままになった人がいた。
ぐれる奴もいた。
手首を切って心の混沌を他人にぶつける人もいた。

「ルールを破ることでしか、心の安寧を保てない・・」
それは、怖いことなんじゃないかな、と思う。

再び真っ黒になった銀座線の窓を見つめながら、僕は名前を決めた。

白い、気づき。
これにしよう。

〜不幸を幸福に〜まではいかなくても、せめて〜破滅は避けられる〜はずの心の作用。
「限りある命」という宿命を背負いながら、それでも生きるために
太古ネアンデルタール人も、明石原人も、きっと考えた方法論。

白い、気づき。

感情をはき出したあと。
そんな気づきを持てる人に
なっていきたい。せっかく名前も付けたことだし。

「白い、気づき。それで、いい」

人混みの中で見るハチ公は
左の耳をぺこんと折っていて
それが何だか
僕にウインクしてくれているように見えた。




posted by 白井麒麟 at 03:01| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月24日

いつも帰るべき音

(この記事にあるCradle Songの演奏ファイルは、
左側のカラムの一番上に置いています)



**


出かける予定がなかったから。僕は久しぶりにアコギを手にとった。
日曜の午後。
家族は買い物に出かけていたから。
最近のブログは音も公開できることを思い立ったから。
僕は、パソコンの録音ボタンを押して静かに弾き始める。

ボロン ボン ボン ボーン・・

遅いリズム。
「性的な魅力のない音楽だなぁ」
失礼ながら、そんなことを思う。
岡崎倫典の"Cradle Song"。「子守歌」、という意味だろう。

録音していると思うと、単純なところでも間違えてしまう。
録音ボタンとストップボタンをカチカチとクリックする。


ボロン ポン ポン ボーン・・

もったりとした曲、なのだろう。たぶん。
ダサイ、のかも知れない。
でも僕は、数あるリンテン氏のギター曲の中で、この曲が一番好きだ。
多分それは、父親になったから。


やわらかいメロディをつむぎながら、僕は
いつもあるべき心の状態に戻っていく。
そして、またも気付く。

「このメロディは、子どもが寝ている状態で
その寝ている子どもに聴かせる曲なんだなぁ」

寝ている我が子に、語りかける、ということ。

情報伝達のためでなく
自慢するためでもなく
気を引くためでもなく。

ただ、寝ている我が子に語りかけるということ。
なんと不思議なこと。


何度も間違えてはやり直すうち、
僕のMACBOOKが、「時間切れ」とでも言うように
冷却ファンの大きな音を立て始める。
その音がしっかり録音されていく。

・・まあいいや。



そういえば、こんなことがあった。

娘がまだ小1のころ。

日曜日、この曲を弾く僕のそばに娘がいた。

よく晴れた午後。
娘は何やら手作業をしている。

遠くで子どもが遊ぶ声。
そして、僕のギターの音。
いつものように僕は、弾いているうちにちょっと切ない父親の気持ちになる。
娘は手作業を続けている。
黙って、集中して続けている。

『耳に入ってないのかな・・』

最後の音が減衰していく。
音が無くなってしまうのを待って、僕はギターをコトリと置き、娘をみた。
そして

「分かったかっ」

と、冗談めかして言った。

「うん」

娘は、一瞬僕の顔をみてうなづき、また何やら分からない手作業に戻ったのだった。
びっくりしてポカンとした僕の顔を取り残して。










ネコネンネ







posted by 白井麒麟 at 00:12| 東京 ☔| Comment(2) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

ねこぶくろ



ねこぶくろ一丁目のバス停に到着する。

仕事でもよく来る街なのに、こんなバス停があるとは知らなかった。








ねこぶくろ


ネコアップ





ネコのおじさんの運転するバス。
タラップを降りるとそこはネコの国だった。
僕と同じ人間の観光客がたくさん訪れている。

この国のルール。
フラッシュを激しくたかないこと。
入国の際六百円払うこと(笑)。
あとは、抱っこしようが撫でまわそうが自由。







ねこぶくろロング






王国の中央に鎮座する白いネコ。
キミは王子様かい。

僕のカメラがフォーカスの光を放つ。
そのたびまぶしそうに目を細めるくせに
ちっともその場所を離れようとせず。




ネコの目





深い蒼に澄んだ目は
何もかも知り尽くしたように落ち着いていて。




『王子様、申し上げます・・』




ちょっといたずらしたくなる。




この国の外の話です。
野生のネコは、東京をかけずり回って
残飯などを食しながら生きています。
彼らの肉球はアスファルトによってカチカチになりました。
彼らの一生は、残飯を探すことに費やされているといっても
過言ではありませんーー




・・




『・・関係、ニャい』



・・




・・(笑)




ネコが治めるネコの国。
その名は「ねこぶくろ」。








レース2













タグ:ネコ
posted by 白井麒麟 at 12:07| 東京 ☔| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

台風一過





ウチの娘。
なんと出無精なことだろう。
やっと晴れたので出かけようといっても
眉間にしわを寄せる。

「ステーキ食べに行こう」

ちょっと思い切ったこの言葉で、やっとパジャマを着替え始める。


内房




初めて行く街。
初めて行く店。
約束通りステーキを注文(ネットでメニュー確認済み)。
出てくるまでの間、マンガを読んでいる。
表紙を見ると、「地獄少女」と書いてある。


テーブル一杯に広がった料理が落ち着いたころ、切り出してみる。


「近くの美術館でシャガール展ってのやってんだけど」
「観たい観たいっ。あたし絵とかメチャ興味あるっ」


こんなに食いつくとは。
おいしいものは、本当に人の気分を変えるから不思議だ。



シャガールちらし


陰鬱。幻想。抽象。
『小学五年には、ちょっと早いのかな・・』
そう思いながら、一人前に背だけはすっと伸びた背中をチラチラと見つめる。
鑑賞後、帰ろうとすると
「ちょっと待って」と。
気に入った絵の絵はがきを、こづかいで買っていた。


出不精なはずの、ウチの娘。
駅までのモノレールに乗りこみ、一息つくと、高らかに宣言。

「でもあたし、クリスチャン・ラッセンの方が好き」

・・。
まあいいや。




台風が来て
地震まであった
三連休が終わる。




夏空






そして、夏
って感じ。




タグ:休日 夏空
posted by 白井麒麟 at 23:29| 東京 ☁| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

なんで働くの


Scene1


じゃ、逆になんで働くの?

いや、聞いてみただけ。
急に不思議に思えて。

(メールの送信を終える)


Scene2


赤ちゃんポストってあるじゃん。
ああいうの許せないよね。自分で産んだ子くらいちゃんと育てろっつーの。
あたし? あたしは子どもなんて作らないよ。
てか、欲しいと思わないもん。変な話、育てる自信ないし。

(コーヒーをすする)

途中でムリムリってなっても、後戻りきかないじゃん。
だったら最初からしない・・かな。


Scene3

「消費者2.0」と呼ばれるたちは、おしきせの情報を重視しません。
生活パートナーであるつれあいとともに、自ら多角的に情報を集め、
常に賢い選択をしていく力を持っています。
そこで、より個人にカスタマイズされた情報をその時々に応じて・・

(レーザーポインターで輪を描く)



Scene4

焼きたてのせんべい、おいしいよ。
はい、ふたつね。

(せんべいをビニール袋に入れながら)

紫陽花どうでした? 今が一番いいですよ。
少し雨降ったからね。今年は色もいいですよ。

はい、お待たせ。
ありがとうございました!



せんべい屋さん.jpg




タグ:仕事 頑張る
posted by 白井麒麟 at 04:16| 東京 ☀| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月14日

ネオンテトラ



「わたしが世話をするから。お願い!」


娘のわがままで我が家にやってきたネオンテトラ。
一年くらい前に、約十匹。


水槽の中で青い光りながら泳ぐ小さなその姿は、確かにときどき「いいなぁ」と思う。
そのかわり、狭いマンションには、ずっと水槽に水を循環させる音が響いている。


えさやり、水の入れ替え、水槽の掃除・・
最初の宣言にもかかわらず、娘はそのほとんどをお母さんにさせている。
「もう捨ててしまうよっ」
お母さんにそう言われて初めてシブシブ手伝ったりする始末。
ものぐさな僕に似たのを僕は喜ぶべきではない・・のだろうな。


ネオンテトラたちは、ただ泳ぐ。
すーっと泳ぐ。
音も立てず、毎日。
四角い水槽の中を。


今朝、そのうちの一匹がおかしな動きをしていた。
身体の一部がふくれて、縦になって泳いでいる。
病気にかかってしまったのだろう。


その姿を眺めながら、僕は思う。
この一年、僕はネオンテトラたちを気にかけたことはほとんどなかった。
気にかけないうちに、目の前にいて
気にかけないうちに、消えていく小さな命。


「これでいいのかな・・」


分かってるよ。
「これでいいんだよ」って
僕が自分に言ってしまえば、「解決」。
なんだよね。


ぶらんこ





posted by 白井麒麟 at 13:03| 東京 ☔| Comment(0) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月12日

ええねん



ええねん。
ウルフルズ。


僕のiBOOKから流れていたその歌を、三歳の息子は気に入ったようだ。


布団にちょこんと座り口ずさんでいる。
ひざでてんてんと叩いてリズムをとりながら。
声はかなり小さい。
しかも‥



     ♪ おかしたべてもええねん

      おちゃのんでもええねん‥





でたらめな歌詞




     ♪おちやいっぱいのんでもええねん

      おちゃばっかりのんでもええねん

      でんしゃのってもええねん

      でんしゃかってもええねん‥





子どもの、子どもなりの主張にも聞こえたりして。

僕はその歌詞も、とても気に入った。



階段






posted by 白井麒麟 at 22:23| 東京 ☔| Comment(3) | あしもとの小さな音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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